この記事は筆者(当院の院長)が書いています。筆者のプロフィールはこちらへ。更新日:2024年11月10日 

【 解説 】 不妊

不妊症のイメージ

■不妊は鍼灸で最も理想な治療法の1つです。


様々な原因で起こる不妊症。そして様々な治療法がある不妊症。悩んでいる患者様はどこが良いのか分からないことが多いのではないでしょうか。
当院では冒頭にも書きましたが、不妊治療は鍼灸が最も理想な治療法の1つと考えています。
その理由は
@体外受精で必要な「採卵」は肉体的苦痛や精神的苦痛を伴うことがありますが、鍼灸は、筋肉のコリを緩和することで体の疲労を取り、全身調整をすることで、「冷え性」を改善させ、「月経」を正常に整えて、「精子や卵子の質」を改善することが期待でき、結果として妊娠しやすい身体に体質に変えることが可能になります。その過程において、当院は痛くなく熱くない施術で効果を出すことが可能なので肉体的苦痛・精神的苦痛はほぼありません。
A現代医学との併用が可能だから。
以上になります。

これだけでは判断しにくい方の為に、現代医学の考え方の概要と鍼灸の考え方を説明していきます。
医師の説明

■現代医学では・・・・


【 定義 】
・生殖機能を有する年齢の男女が妊娠を希望し、1年以上避妊せずに性交を行っても妊娠しないことを言います。

【 原因 】
原因は大きく分けて以下の3つあります。
@カップルの両方にある。
A女性側にある。
B男性側にある。

@の原因は「加齢」です。
加齢によって精子・卵子の質が落ちてきます。
それで自然妊娠しにくくなってしまうわけです。

Aの原因は5つあります。
@.排卵障害
・精神的やダイエットが原因で月経不順となり不妊になる場合もあります。
・乳汁を出すホルモン(プロラクチン)が亢進して高プロラクチン血症になって不妊になる場合もあります。
・甲状腺が原因で起こる場合もあります。

A.卵管因子
・性病により卵管が詰まるもしくは卵管が癒着することで卵子が取り込まれにくい場合があります。
・手術・子宮内膜症で卵管周辺が癒着することでも起こります。

B.子宮因子
・子宮筋腫や粘膜下筋腫により受精卵が子宮内膜に着床しにくい場合があります。

C.頸管因子
・排卵期におりものが出るが、何らかの原因でおりもの分泌が減ることで精子が子宮内に貫通しにくい状態になると不妊になりやすいです。

D.免疫因子
・精子の障害する抗体と精子の動きを止めてしまう抗体を分泌しやすい女性は精子の動きを妨害することで不妊になりやすいです。

Bの原因は3つあります。

@.造成機能障害による
精子の数が少ないまたはない・あるいは精子の運動が悪いと不妊になりやすいです。

A.精子通路障害による
ペニスから精子が出るわけですが、出るまでの過程で通り道が塞がれてしまうことで不妊になるケースがあります。

B.性機能障害による
勃起障害などで性交で射精できない場合は不妊になるケースがあります。
不妊治療
■現代医療の治療法とは
⑴タイミング法
排卵日を予測して性交のタイミングを合わせる治療法になります。経腟超音波などで予測します。排卵日2日前から排卵日までに性交をすると妊娠しやすくなると言われています。

⑵排卵誘発法
排卵のない患者様や排卵が起こりにくい患者様に行う治療法で薬物などで卵巣を刺激して排卵をおこさせる方法になります。
■内視鏡手術
・検査としても手術としても行われます。腹腔鏡検査で子宮や卵管などに病気が見つかることもあり、検査と同時に治療を行うことも可能です。

・子宮鏡手術では子宮のポリープや子宮筋腫を切除することができます。卵管鏡手術では閉塞している卵管を通し自然妊娠する可能性を高めることも可能です。

■人工授精
・精子に問題がある男性不妊症が主な適応になります。男性の精液を妊娠しやすい時期をねらって、細いチューブを使い女性の子宮内に注入して妊娠をさせる方法になります。

■体外受精
・採卵をして、体外で精子と受精させて数日後に受精卵を子宮内に戻して妊娠をさせる方法になります。
体外受精の対象になるケースは一定期間人工授精をしても妊娠しなかった場合や不妊の原因が卵管閉塞だった場合などがあります。
お金
■費用
・2022年4月から不妊治療の保険適応が拡大されるようになりました。それにより、すでに不妊治療を受けている方、これから受ける方において保険の適応となりました。

・不妊治療の保険の適応条件として・・・・
@40歳未満の方:一子ごとにつき通算6回まで保険が適応。
A40歳以上43歳未満の方:一子ごとにつき通算3回までが適応。
・保険治療によるメリット・・・・
@窓口負担が軽くなります。
保険適応前だと1回あたりの体外受精の費用が約50万。保険治療ですと3割負担で済みます。
A高額療養費制度の対象になります。
年齢・所得により上限が異なりますが適応されるとさらなる負担軽減になります。

・不妊の保険治療の適応により特定不妊治療助成制度は廃止になりました。
置鍼中

■鍼灸では・・・


東洋医学(鍼灸)では「無子」と言います。

< 原因 >
・過労・ストレス・飲食不摂生などにより、肝と腎(現代医学で言う子宮・卵巣等の生殖器に相当)もしくは脾胃(現代医学で言う胃腸)、もしくはそれら両方の働きが低下することで、@気血(臓器を動かすエネルギーと栄養)が足りなくなり、肝腎が正常に働くことができない。A気血は足りているけれども肝腎が正常に働くことができない。以上により不妊が起こると考えます。
・同じく内臓の働きが低下したことにより体内にある不要な物(水滞「すいたい」と読み、意味は「不要な水」・瘀血「おけつ」と読み、意味は「不要な血」など)が肝(現代医学で言う生殖器)に滞ることにより、本来の肝の働きができない為に不妊になると考えます。
< 施術方針 >
@内臓(特に肝・脾胃・腎)の働きを改善し、調和を図ること。
A内臓(特に脾胃や肝)の働きが低下したことにより生じた身体に不要な物質を取り除くこと。
B腰またはお腹・お尻にあるツボを使い筋緊張を取り、生殖器に関係の深い下腹部・骨盤の神経を調整し、妊娠しやすい人体環境を整えること。

< 施術経過 >
・機能性(臓器の働き)か器質性(臓器に異常がある)かにより経過は違います。一般的に機能性の方が経過は良いことが多く、器質性は現代医学の治療と併用した方が効果的でかつ経過も良いです。
・年齢によっても変わります。加齢により本人が気付かないうちに徐々に細胞の質が低下してきますので、40代前半に比べて30代は経過は良い傾向にあり、20代は30代より経過は良い傾向にあります。

< セルフケア >
・セルフケアとして当院が「不妊に良いと思うツボを3つ」と「食事のアドバイス」を挙げてみます。
まずはツボを3つ以下に挙げてみますね。
・関元穴
関元
・任脈のツボで脾経・腎経・肝経が交わる重要なツボになります。ここに灸をすることで胃腸の働きを調整・腎と肝(生殖器)の働きを調整することが期待できます。
・帰来穴
帰来
・胃経のツボでお腹にあります。ここに灸をすることで、生理不順・生理痛の改善に効果が期待できます。
生理不順・生理痛が改善することで妊娠しやすい状態にします。
・血海穴
血海
・脾経のツボで太ももにあります。このツボは血が集まるという意味があり、血にまつわる症状(不妊・貧血等)に効果的な重要なツボになります。お灸で温めて下さい。
食事療法
次に東洋医学の観点からみる食事療法について

・東洋医学では医食同源と言って食事も重視しています。
 鍼灸治療だけでもめまいの改善は可能ですが、食事の内容を工夫することも改善への近道になります。不妊症を改善するには「内臓の働きを改善して体力をつけること」・「体内に溜まった不要な水分や血液を排泄すること」の2点が大事になります。
・食欲不振・下痢・疲れやすい・生理の量が少ないもしくは期間が短い人は気血(臓器を働かすためのエネルギーと栄養分)が不足しています。
そういった方には牛肉・豚肉・いか・玄米・ジャガイモ・ほうれん草等食べて栄養をつけて下さい。

・生理時に血の塊がある、便秘気味で生理痛がひどい、生理が遅れてくる等の人は瘀血が原因のことが多いのでそういった方は適度な日本酒もしくは焼酎・玉ねぎ・もも等を食べて下さい。

・肥満体系の方は水の代謝が悪いことが多いので、ハト麦・たけのこ・あさり等を食べて尿を出すことと軽い運動をしてじわっとした汗をかいて下さい。なお甘いものの取りすぎには注意して下さいね。

【 詳細ページ 】
・東洋医学の考え方

症例

【 症例1 女性 32歳 】
■予診票からの患者様の情報
この患者様は過去に当院で不妊治療をされ、無事に妊娠して男の子を出産された方です。お子さんも大きくなり、職場復帰をされて、第2子が欲しい。そして前回不妊治療で受けられていた時に、肩〜背中痛みを感じていると言われたため、追加して治療を施したところ身体が楽になったと実感があったので今回はストレスの方も治療をしてほしいということで、予約を取り施術を開始した。なお再開時には2歳のお子さん(男の子)も連れて見えた。過去に患った病気は特にはありませんし現在飲んでいる薬も特にありません。・・・続きを読む。

・まとめ

・不妊症の原因は現代医学と鍼灸では全く異なっています。現代医学の方が細かく分類されています。
・不妊の治療についてですが現代医学は原因が細かく分類されているだけあって治療法も多く存在します。

・鍼灸の不妊治療はそんなに苦痛を伴うことは少ないです。色々なやり方がありますが、当院の不妊治療の特徴は東洋医学の考え方で個々の体質に合わせた施術をしますので、鍼は痛みをほとんど感じない施術をする・お灸も火傷をさせず温かいと感じる程度で施術をして、身体に優しく心地よい鍼灸をして妊娠しやすい身体を作っていきます。

・理想の不妊治療は鍼灸で冷え、月経異常を治しながら妊娠しやすい身体を目指しつつ、現代医療の治療を併用することですね。いくら良い治療が発見されても母体が胎児を育てる環境ではないとまず妊娠しにくく、仮に妊娠しても流産の危険性も出てきますから。

・経済的な負担についてですが、現代の不妊治療も保険適応になった関係上、幾分かの負担の軽減はされているはずですが、制限があるのが残念な所です。(治療開始時43歳未満までの方が対象。40歳未満に開始ですと6回。40歳以上43歳未満に開始ですと3回までになります。)費用面においても2022年4月より保険適応になり、費用負担はだいぶ軽減されます。
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