■この記事の筆者は当院の院長です。院長プロフィールはこちらへ。公開日:2022年4月4日 更新日:2024年9月13日

【 解説 】 潰瘍性大腸炎

腹痛

■鍼灸を行うことで症状を改善することが可能、継続施術をすることで症状の安定も可能です。


・鍼灸治療で完治させるのは難しいですが、根気よく続けていくことで潰瘍性大腸炎の症状をコントロールできることが期待でき、その結果として生活の質の維持・向上も期待できます。

・ではなぜ鍼灸が効果的なのか説明します。
鍼灸はツボを刺激し神経(運動・感覚・自律神経)を調整し、血行を促進し、炎症を抑えることで効果が期待できるからです。
・症状の改善で得られる利益はいくつかります。
@辛い表情を見ることが少なくなるので気分的に明るく前向きになれる。
A今まで仕事がはかどらず迷惑をかけたが、改善されることでそのようなケースも減る。
➂趣味に没頭できる余裕ができる。
などがあげられます。

もっと潰瘍性大腸炎のことを知りたいあなたまたは気になるあなたは是非続きをよんでくださいね。
解説

■現代医学では・・・


・潰瘍性大腸炎は大腸の粘膜に炎症が起こり、その粘膜がびらんや潰瘍が生じてしまう炎症性の病気です。特徴的な症状は下血を伴うもしくは伴わない下痢とよく起こる腹痛です。病変は直腸から連続的に広がり、最大で直腸から結腸全体に広がります。

・国内におけるこの病気の患者数は約16万人でアメリカの半分以下になります。
・発症年齢のピークは男性が20から24歳・女性が25から29歳で男女とも20歳代になりますが、高齢者でも発症する場合があります。男女比は1対1で差はありません。

・原因は不明で、自己免疫の異常や食生活の変化の関与が考えられています。

・潰瘍性大腸炎は家族内での発症が認められる為に何らかの遺伝的因子が関与すると考えられていますが、現時点で遺伝に関する明確な回答はないです。

■症状
・下痢(軟便で回数が増える)や血便が認められます。
・引きつったような腹痛または持続性の腹痛が起こります。
・重症になると発熱や痩せる・貧血などの全身症状が出てきます。腸管以外の症状として皮膚の症状や目にも症状が出てくることがあります。

■診断と治療法
・診断ですが、まずは感染症の有無を確認します。感染症が否定できれば内視鏡などで大腸を検査して腸内にどれだけの炎症があるか診ます。さらに大腸の粘膜を少し取って病理診断を行います。総合的に診て潰瘍性大腸炎かどうか診断をします。
・治療法は薬物療法と手術療法の2つがあります。薬物療法では5−アミノサリチル酸製剤・ステロイドが中心で治療経過によっては免疫調整剤・血球成分除去療法・抗TNFα受容体拮抗薬などでうまく調整し症状をコントロールします。
 次に手術療法ですが、これは薬物療法で症状が上手くコントロールできない場合・腸に穴があいた場合(穿孔)・大腸がん・大量出血を併発して場合などに行います。大腸全摘手術の場合には小腸で人工肛門を作る場合もありますが、近年では小腸で便を貯める袋を作り肛門につなぐ手術が主流です。

■予後
・多くの患者様は症状の改善や寛解になりますが、再発するケースも多く、良い状態を維持するためにも継続的な治療が必要になります。様々な内科的治療を受けても改善ができない患者様には手術が必要になる場合もあります。
・また発症から8年くらいすると大腸がんを合併する患者様が出てくるので、そのような患者様には定期的な内視鏡検査が必要ですが、実際には大腸がんを合併する方は少ないです。重症で手術が必要な方以外の患者様を除けば、予後の経過は健康な方とあまり変わりはありません。
灸施術

■鍼灸では・・・

「潰瘍性大腸炎」という病名はありません。腹痛または下痢の分野に当てはまります。

< 原因 >
・ストレス、生活環境、体質により内臓(主に肝・脾・腎・大腸)の働きが低下したことに気血水の調整できず、体内で発生した身体に不要な物質(湿邪・熱邪・瘀血)が大腸を犯すと症状が起こると考えます。
< 施術方針 >
・内臓(主に肝・脾・腎)の働きを良くして気血のバランスを整えて、体内で発生した身体に不要な物質の排出を促します。あと治療だけではダメなので、症状改善の為の養生のアドバイスの提案をします。

< 治療経過など >

・治療経過について
個々の体力によって大きく異なりますが、鍼灸治療を受けることで1時的には身体は楽になることが多いのですが、症状は良くなったり、変化がなかったり、悪化したりを繰り返しながら、徐々に改善されていくパターンが多いので、中長期的にわたり定期的に鍼灸を続けることが必要になります。

・鍼灸と薬物治療との併用について
鍼灸治療と薬の併用をして頂いても問題はありません。鍼灸の効果で薬が効きやすくなりより一層コントロールがしやすい場合もあるので。そして症状のコントロールができ、緩解してこれば 薬の減薬の可能性も出てきます。(薬については自己判断で止めるのだけはしないで下さい。必ず医師の指示に従ってくださいね。コントロールできればきっと医師も薬の加減をして頂けるはずですから。)
症例
■施術例
*施術例をあげますが、施術には個人差があります。

では早速挙げていきます。2021年5月から約10か月間、主訴(もっとも辛い症状)がアトピーで既往歴(過去にかかった病気)が潰瘍性大腸炎の患者様を週2回のペースで施術致しました。
【 結果 】
・潰瘍性大腸炎による症状、下痢・便秘・腹痛などは施術開始より半年後頃より安定してきました。
・血液検査(初検から約半年頃経過に行った)の結果は健康の方に比べれば良くないが、病気の割には安定している方だと報告を受けました。
・アトピー性皮膚炎についてはこの記事で関係ないことですので、ここでは省きます。
■セルフケア
・当院院長がおすすめする3つのツボをあげておきました。参考にして下さい。
・飲食でのケアは「温かく消化に良い物を食べるようにして下さい。」冷たい物や生もの・生野菜はできる限り控えて下さいね。体が冷えると胃腸の働きに悪い影響を及ぼす可能性が高いので・・・。胃腸の働きに影響がでることで体に必要な栄養が作れない→作れないから他の臓器に栄養が運ばれない→運ばれないから臓器も正常に働かない→様々な症状がでます。
■陰陵泉穴
陰陵泉穴
・陰陵泉(いんりょうせん)穴は足の太陰脾経の1つのツボで合水(こうすい)穴です。このツボを使用することで脾の働きを改善し下痢を緩和する効果が期待できます。
■三陰交穴
三陰交穴
・三陰交(さんいんこう)穴は足の太陰脾経の1つのツボで、肝経と腎経と脾経の経脈が交わる場所です。このツボで脾・腎・肝の働きを調和し腹痛の緩和が期待できます。
■章門穴
章門穴
・章門(しょうもん)穴は足の厥陰肝経の1つのツボです。このツボは脾の募穴になります。このツボで肝脾の働きを改善かつ調和し下痢または食欲不振に効果が期待できます。
【 詳細ページ 】
・東洋医学の考え方

■まとめ


・潰瘍性大腸炎は難治性の病気になります。
 症状が落ち着いてもストレスなどですぐに症状が悪化しなかなか安定が難しいのですが、鍼灸を併用することで比較的安定しやすくなります。

・日常生活での注意点はバランスよい食事を取ること。そして規則正しい生活を送ることです。夜更かしなどなるべくしないように気を付けて下さいね。

・ストレスも良くないので、軽い運動等をしてストレスと上手に付き合うことが大事になります。
TEL
お問合せ

PageTop