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■この記事の筆者は当院の院長です。詳細はこちら。公開日:2022年2月7日 更新日:2024年8月5日

鍼灸ではこう考える|新型コロナウィルス後遺症

2019年12月初旬頃に中国武漢市で初めて報告された新型コロナウィルス。日本においても2020年7月以降感染発症者が増え始めてきた頃より新型コロナウィルスの後遺症も増えてきました。そして2022年2月現在オミクロン株が主流になっています。

ここでは新型コロナウィルス後遺症の症状を再度まとめた上で東洋医学(鍼灸)ではどういう風に考えるのか説明していきます。

新型コロナ

現代医学では・・・

・新型コロナウィルスの後遺症は身体が怠い・呼吸がしにくい・咳が残る・味覚や嗅覚の障害が主な症状です。20歳代以降の年代で高確率で認められ、発症後月単位(3か月前後)で長引くことが分かってきています。

・症状が回復した後に出る遅発性後遺症は髪の毛が抜ける・記憶障害・睡眠障害・集中力の低下などが見られます。
■新型コロナウィルスの後遺症の原因や治療法
・現段階で活動性ウィルスそのものの影響・サイトカインストームの影響・抗体が少ないことによる不十分な免疫応答などいくつかの仮説がありますが、はっきりした原因は分かっていません。

・治療法については現段階では確立した治療法はなく対象療法が中心になります。亜鉛やビタミンCの投与で症状の持続期間の短縮には寄与しなかったと報告もあるのでさらなる研究が必要になるとのことです。*亜鉛が不足すると味覚障害・皮膚炎・脱毛・食欲不振などになりやすい。ビタミンCが不足すると壊血病・貧血などなります。

鍼治療

鍼灸では

・現代医学による新型コロナウイルスの後遺症の症状がいくつか出てきました。ここでそれぞれの症状が出る原因を東洋医学(鍼灸)の考え方で説明をします。

・倦怠感、記憶障害は脾虚(胃腸の働きが低下した状態)に相当します。
・集中力の低下は腎虚(腎の働きの低下)に相当します。
・咳は脾虚・肝虚(肝の働きの低下)・腎虚などで一概にこれとは言い切れません。
・呼吸がしにくいのは「水の代謝不良から生じる痰」・「痰と熱が混ざった状態」・「肺または腎の働きの低下」などが考えられます。

・味覚障害は脾虚や胃熱の他に心熱が考えられます。脱毛症は頭(肺または心)に熱が籠ることで起こると考えられます。

・睡眠障害は色々ありますが、不眠であれば心熱が主な原因だと考えられます。入眠が難しく目が覚めが悪い時は脾虚が考えられます。

・以上のように症状をそれぞれ分析してみましたが、実際の臨床では上記の症状が複雑に絡んでいるので、問診だけでなく脈やお腹の状態などを駆使して患者様の身体の現状を東洋医学的に分析した上で東洋医学的な診断を出します。そして診断に合ったツボを処方して鍼灸施術を行っていくわけです。

■施術効果についてどう考えているか
・これはどんな病気・症状にも共通して言えることですが、患者様に体力があって、早期に施術開始して、施術回数や頻度も多い場合、施術効果は最も期待できます。反対に体力が落ち、施術開始が非常に遅く、施術回数が月に1回程度の場合、一時的に身体の症状が軽くなることがあったとしてもしばらくすると元に戻ってしまいます。

■鍼灸施術を検討している方へ
現代医療でもなかなか効果的な治療法が見つかっていない状況で早く改善して欲しいと誰しも思うわけですが、コロナウイルスによってひどくダメージを受けた身体の細胞が回復するまでには、どうしても時間がかかります。週1回以上3か月間、通院して頂くとウィルスによって受けた身体の細胞が改善されていく可能性があります。細胞の状態がよくなればそれに伴い症状も軽減されてくるはずですから。
【 詳細ページ 】
・東洋医学の考え方

症例

■当院の症例

2023年11月〜2024年7月の間で5件ありました。

内訳:胃腸障害(2件)と味覚嗅覚障害(2件)と頭の違和感(1件)
・(症例1)発症後4ヶ月経過後に発生した食後の胃の不快感。
・(症例2)発症後4ヶ月経過後に発生した腹痛と下痢。
・(症例3)発症後2週間経過の味覚障害。
・(症例4)発症後2週間経過後の頭の違和感。
・(症例5)発症後1週間経過後の味覚嗅覚障害。
【症例1】
当院に通院し始めた時には後遺症になって10か月経過。食後の胃の不快感があり、体重が10kg落ちた。週2回を2ヶ月半継続して施術を受けたことで症状がほぼ解消。東洋医学的診断は肝虚証。

【症例2】
当院に通院し始めた時には後遺症の疑いになって2か月経過。腹痛、下痢が出た。体重も6か月で5キロ落ちた。施術は週2回で開始。1ヶ月経過した時点で調子の良い悪い日が出てくるようになってきた。その後週1回に変更。現在(2か月弱)では良い日が多くなってきたと効果を実感。腹部や背中のツボに強い反応が残っている状況で継続施術中。東洋医学的診断は脾虚証。

【症例3】
コロナ感染後10日経過した頃に味覚嗅覚異常が発生。それから4日後に通院された時には徐々に感覚が戻ってきているとのことでしたが、治りきらなかったらどうしようかという不安があったとの事。
施術1回で味覚嗅覚が戻り、2回の施術で終了。東洋医学的診断は脾虚証。

【症例4】
当院に4年間定期的に通院されている患者様。
コロナ発症後2週間経過してからの通院。頭の違和感(ぼーとしている感じ)があり施術。コロナの後遺症を防ぐ観点より施術3日後に再通院。
頭の違和感は訴えることはなく、「全く眠れない」ので困っていると辛い症状が変わっていました。
東洋医学的診断は脾虚証で膀胱経の異常。

【症例5】
股関節痛で定期的に通院されていた83歳の女性。コロナに感染し1週間後に通院。味覚と嗅覚があまりないとのこと。施術して1週間後通院には特に変わったことはないよと言ってみえました。
東洋医学的には脾虚証で瘀血(不要な血液)。
■まとめ

・新型コロナ後遺症は2024年1月現在現代医学では優れた治療法はありません。

・鍼灸では個人差がありますが、後遺症の予防もしくは後遺症の改善には効果が期待できます。特に発症し症状が落ち着いてきたら嗅覚、味覚障害、倦怠感がなくても早めに施術を受けること当院ではおススメします。

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